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相続手続き

始まりました!!相続土地国庫帰属制度

目次

制度が創設された背景

『相続をしても過疎地域の土地。農地、森林などで利用できない』

『遠くに住んでいるから利用できない』

『土地を管理しないとならないが、費用や労力の負担が大きい』

土地を望まず相続した所有者は、負担感の大きさから管理を怠ることが多く管理をしないことで近隣に迷惑をかけることが少なくありません

では、このような土地を受け取らず、「相続放棄をすればよいか」というとそんな簡単な話ではありません。

相続放棄をするとなると、「相続したくない不動産だけを相続放棄できるか」というとそうではなく相続したくない不動産以外も全て相続放棄をしなければいけません。

受け取りたくない不動産はあるけど、ほかの財産は相続したいので、「しょうがなく相続する」という人も少なくありません。

また『しょうがなく相続する』人の中で、「国や地方公共団体が引き取ってくれるのではないか」と掛け合う人もいるのですが、ほとんどのケースで引き取ってくれませんでした。

このように利用価値の低い不動産を相続した人は、利用もできず、引き取りてもないので、困っていました。

そのため「使わない不動産を相続したくない」という気持ちから相続登記をしない人がたくさんいました。

相続をすると「処分」をするという出口がないから、管理せざるを得なくなるので、相続登記をせずに不動産を放置、さらにその放置した人が亡くなり『所有者がわからなくなる』という『所有者不明の土地』も増加しています。

こういった問題から令和6年4月1日から相続登記の義務化が始まるのですが、そうなると相続したくない不動産も相続することになります。

相続したくない不動産を相続してもらうだけではなく、「手放す」という選択肢を与えようと創設されたのが、今回の『相続土地国庫帰属制度』です。

要らない不動産を一定の要件さえ満たせば、国に引き渡すことができます。

つまり、『相続登記はしてもらうけど、処分もできるよ』という建付けです。

制度と既存の制度のメリット、デメリット

①相続土地国庫帰属制度

メリット(一筆の土地単位で申請することができる)

デメリット(相当額の負担金を支払うことが必要)
     (共有者がいる場合は全員が共同で申請する)

②相続放棄

メリット(裁判所の手続き費用が安い)
    (相続人一人で手続きが可能)

デメリット(全ての相続財産を放棄することになる)

③国や地方公共団体等への寄付

メリット(負担金のような金銭の支払いが必要ない)

デメリット(受けてもらえる国や地方公共団体等を探すのが困難である)
     (実際はほとんどが受け取ってもらえない)

④民間売買

メリット(売買代金を受け取ることができる)

デメリット(購入してもらえる相手を探すのが困難である)(自分が捨てたいほどの要らない土地は、なかなか買い手が見つからない)

相続土地国庫帰属制度を検討するような土地は、国や地方公共団体等が引き取ることも、民間売買を行うことも現実的にはかなり厳しいです。

選択肢としては相続放棄と相続土地国庫帰属制度を検討することになりますが、相続土地国庫帰属制度は、該当の不動産を単独で検討できるのが大きなメリットです。

うまくいけば多くの人が救われる制度ですが、この制度を使える人は限られます。

制度を受けるための要件

まず、相続した土地を国に引き渡すための申請ができるのは、相続や遺贈で土地を取得した「相続人」です。

遺贈で受け取った土地でも「法定相続人」でない場合は申請ができません。

制度の開始がされる令和5年4月27日以前に相続された土地でも「相続人」であれば申請できます。

また、兄弟など複数の人たちで相続した共同所有の土地でも申請できます。
(所有者全員で申請する必要があります)

「生前贈与」を受けた相続人、売買等によって取得した個人・法人は相続人ではないため申請はできません。

制度が受けれる『土地の要件』の中に「申請の段階で却下となる土地」があります。

・建物がある土地
・抵当権等の権利が設定されている土地
・他人による使用が予定されている土地
・特定有害物質により土壌汚染されている土地
・境界が明らかでない土地、争いがある土地

「該当すると判断された場合に不承認となる土地」

とても煩雑でわかりにくいのですが、簡単に説明すると、がけ地や樹木が生い茂っている土地、建物の基礎部分が残っている土地、古い水道管・浄化槽・井戸等が残っている土地、他の土地に囲まれて公道に通じない土地などは不承認になるようです。

また、通常の管理・処分するにあたり過分な費用・労力を要する土地も不承認になります。

注意するポイント

1・申請する前に建物を解体してしまうと、建物がない場合固定資産税等が上がってしまうことがあるので、先に承認されるかどうかの確認をしてから解体をすること。

2・山林など境界が確定しずらい土地、隣接地と境界で揉めている土地は対象となりずらいので要注意。

3・がけ地ではほぼ使えないので、こちらも要注意。

制度にかかる費用

審査手数料として、1筆の土地当たり14,000円を納付する必要があります。

法務局の審査を経て、承認されると土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した「10年分の土地管理費相当分の負担金」を納付します。

負担金は1筆ごとに20万円が基本になります。

同じ種目の土地が隣接していれば、負担金の合算の申出をすることができ2筆以上でも負担金は20万円が基本となります。

一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林面積に応じて負担金を算定するものもあります。

「宅地」は面積にかかわらず、原則20万円となります。
但し例外として、「市街化区域又は用途地域が指定されている地域」内の宅地は、面積に応じて計算式により算定し負担金を計算します。

(例)
・50㎡(411,000円)
・100㎡(548,000円)
・200㎡(793,000円)

それプラス事前に
・建物の解体費用(200万から300万円)
・境界を明確にする費用(50万から100万円)

「田・畑」も面積にかかわらず、原則20万円となります。

但し例外として、「市街化区域又は用途地域が指定されている地域」内の農地、農業振興地域の農用地区域内の農地、土地改良事業の施工区域内の農地は面積に応じて計算式により算定し負担金を計算します。

(例)
・250㎡(510,000円)
・500㎡(723,000円)
・1,000㎡(1,128,000円)

「森林」は20万円という原則はなく、面積に応じて計算式により算定し負担金を計算します。

(例)
750㎡(254,000円)
1,500㎡(273,000円)
3,000㎡(299,000円)

国庫帰属の申請が承認された場合、法務局から申請者へ負担金の通知と共に、納入告知書が送付されます。

納入告知書に記載されている負担金額を、到達した翌日か30日以内に納付します。

その際、申請者が共同の場合は代表者1人が納入告知者を受け取り負担金を納付します。

負担金が納付された時点で、土地の所有権が国に移転します。

手続きの流れ

【ステップ1】法務局に相談(インターネットから予約することができます)

相談する際に用意するもの(可能な限り)

・登記事項証明書(法務局で取得)
・地図又は公図(法務局で取得)
・地積測量図(法務局で取得)
・その他の測量図
・土地の現況、全体がわかる写真

【ステップ2】承認申請(必要な書類を用意し、審査手数料を支払います)

承認申請に用意するもの(可能な限り)

・申請書
・土地の位置及び範囲を明らかにする図面
・土地に隣接する土地との境界を明らかにする写真
・土地の形状を明らかにする写真
・申請者の印鑑証明書
・固定資産税評価証明書(任意)
       
【ステップ3】法務大臣(法務局)による審査・承認
(調査・実地調査をクリアした不動産が承認を得ることができます)

【ステップ4】負担金の納付
(承認されれば、承認通知・負担金通知が届きます)

【ステップ5】国庫帰属
(帰属後は管理庁が、国有財産として管理を行います)

以上が相続土地国庫帰属制度の流れですが、申請をしてから結果が出るまでの標準処理期間は、半年から1年と見込まれています。

相続土地国庫帰属制度の利用にあたっては、十分な期間を見込んでの利用が必要です。

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