毎年同じ日に贈与をするのは危険?
目次
定期贈与、連年贈与の概要
連年贈与
生前贈与は、あげる人と貰う人のお互いの意思があって初めて成立する契約です。
あげた方があげたつもりでも、もらった方が、その気が無ければ、生前贈与は成立していないという事です。
生前贈与が成立すると、年間110万円という非課税枠がありますが、それを超えると、贈与税がかかります。
贈与を使った節税対策は、非課税枠の110万円を使ったり、低い税率になる小さな額の贈与を複数回行っていきます。
この複数回行う時に、毎年同じ日に贈与をしたり、同じ額で贈与をすると、1年1年の贈与ではなく、全ての贈与を一体の贈与として捉えられてしまい、大きな贈与税がかかるという噂が相続の業界にはあります。
例えば、こういうケースです。
毎年、孫の誕生日の5月3日に、110万円の贈与を10年間しました。
1年1年は、110万円の非課税枠があるので、大丈夫だと思っていたのですが、毎年同じ日に、毎年同じ額を贈与すると、110万円の贈与を10回したのではなく、合計1,100万円に対して、贈与税を課税されるという噂を聞きました。大丈夫ですか?
このような相談が、よくあります。
こういうケースですが、結論から言うと、問題ありません。
このように、毎年行う贈与の事を『連年贈与』と言います。
連年贈与は、適法に行っていれば、全く問題ありません。
国税庁のHPにも書かれています。
定期贈与の防ぎ方
定期贈与とは、
例えば、1,000万円を贈与する場合、贈与契約書に毎年100万円ずつ贈与するなどの記載がある場合です。
こういった契約書を作成するかたは、あまりいないとおもいますが、これが定期贈与にあたります。
そういった意識がなくても、よく起こってしまうのが『名義預金』というものです。
名義預金とは、父母や祖父母などが、子や孫名義の通帳を作り、そこに預金をしていってるというものです。
名義預金は、子供が若いうちから大きな額の贈与をすると、金銭感覚が狂ってしまったり、稼ぐ力を育む事を阻害するという気持ちから行ってしまうケースが、かなり多いです。
本来、名義預金自体するべきではないですが、この名義預金を行い、更にトラブルを大きくしてしまうケースがあるのです。
それが、父母や祖父母などの贈与者が、110万円の非課税枠内ではなく、贈与をした証拠を作る為に、111万円の贈与を行い、贈与税の申告書を父母や祖父母が作って提出してしまうというケースです。
贈与税は、貰った側、つまり受贈者が贈与税の申告書を提出します。
それを贈与者である父母や祖父母が作って、提出してしまうのです。
税務署は、本当に受贈者が作ったのかどうか、目を光らせていますので、絶対に辞めておきましょう。
これは、過去にも判例があります。
平成19年6月26日の裁決事例として、次の内容があります。
贈与税の申告は、贈与税額を具体的に確定させる効力は有するものの、それをもって必ずしも申告の前提となる課税要件の充足(贈与事実の存否)までも明らかにするものではないと解するのが相当である。
そうすると、贈与事実の存否の判断に当たって、贈与税の申告及び納税の事実は贈与事実を認定する上での一つの証拠としては認められるものの、贈与事実の存否はあくまでも具体的な事実関係を総合的に勘案して判断すべきと解するのが相当である。
つまり、贈与税の申告書は証拠の一つではあるけれども、贈与税の申告書があるからといって、贈与が成立しているかどうかを判断すべきではなく、事実関係を総合的に考えて判断するという内容です。
このように、贈与税の申告書を作る事で、贈与をした完全な証拠にはなりません。
最近だと手書きで、贈与税の申告書を作る事も減っているかもしれませんが、手書き部分の筆跡でバレてしまって、税務調査に繋がったという事例もあるようです。
このように、証拠を作るどころか、税務調査を誘発する事もあります。なので、父母や祖父母などの贈与者が、受贈者の贈与税の申告書を作る事は、絶対に辞めてください。
正しい贈与のやり方
①贈与契約書を作る
贈与契約書を作る事で、贈与をした証拠を作っていきます。
ここでは、先ほどもお伝えしたように、定期金給付契約の内容は入れない事が原則です。
あとは、その贈与契約書がいつ作られたのかという事も、税務調査官は考えています。
悪く考えれば、過去の日付の贈与契約書を後から作るという事も出来ます。
こういう事も調査の内容になってくるので、後から、贈与契約書を作成するというのは、やめましょう。
贈与契約書を後から作ったと勘ぐられないように、この日付で贈与を行ったという証拠を作る事が出来ます。
それが、確定日付という制度です。
確定日付は、公証役場でお金を払って、その日付の証拠を貰う事が出来るのです。
確定日付は、その日付の翌日以降に貰う事は出来ませんので、この確定日付があれば、後から作ったものではないという証拠になります。
確定日付は、2024年11月現在、1件につき、700円で行う事が出来ます。
このように、ポイントを押さえながら、贈与契約書を作って、証拠を作っていきましょう。
②贈与税の申告書の提出
贈与税の申告書は、贈与税の申告書単独で、完全な証拠となる訳ではありません。
しかし、積み上げていく証拠の一つとしては、有効なものになりますので、110万円を超える贈与を行い、贈与税の申告書を提出するのも一つの証拠作りとなります。
③贈与が現金だった場合、振り込みで贈与を行う
現金で持っている物を現金で渡すというのは、証拠がありませんので、親が持っている現金を子供に贈与したという体裁で、実際は親が持ったままという状態もやろうと思ったら出来てしまいます。
そのような状態も、最終的には税務署にわかってしまいますので、そのような状況になったり、勘違いされないように、贈与のお金は、振り込みで行い、証拠を作っておきます。
更に振り込みで使った受贈者の口座は、贈与者が管理するのではなく、受贈者が必ず管理してください。
通帳や印鑑、キャッシュカードなども、受贈者が管理し、入出金なども受贈者が行え、管理している状態です。
そうしないと先ほどお伝えした名義預金と勘違いされてしまいます。
税務調査では、この名義預金を調べて見つけ出し、追徴課税を払わせるというパターンがとても多いです。
未成年者の場合は、親権者が口座の管理をしても大丈夫です。
ただし、成人したら、本人が管理する必要があります。
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